新緑の風を感じて。5月のきもの時間
新緑がまぶしく、風が心地よくなる5月。自然がいっせいに息づくこの季節は、きものでのお出かけが一層楽しくなる時期でもあります。やわらかな陽射しと爽やかな空気に包まれて、心も装いも軽やかに。そんな5月ならではの「きもの時間」をご紹介します。
【単衣の季節、少しずつ】
5月になると、袷(あわせ)から単衣(ひとえ)への移行を意識し始めます。暦の上では6月からが単衣とされていますが、最近は気温が高くなるのも早いため、気候に合わせて柔軟に対応する方も増えています。
5月の単衣きものは、まだ盛夏向きの涼しげな素材ではなく、あくまで“見た目も生地感もややしっかりめ”が基本。少し軽やかな色合いや柄を選びながらも、透け感の強い素材や盛夏用の帯は、もう少し先のお楽しみに。春と夏の間をふんわりと楽しむ、そんな季節です。
【5月の色と柄を楽しむ】
5月といえば、新緑や若葉、そして藤や菖蒲の季節。自然が織りなすみずみずしい緑や、やさしい紫のグラデーションが美しく、きものや帯にもそのエッセンスを取り入れたくなります。
・若葉色や水色のきもので、爽やかなコーディネート
・藤や燕、菖蒲などの季節柄で、今この時期ならではの装い
・鯉のぼりや兜の帯留めで、端午の節句らしいアクセントを
特に、帯〆や帯揚は季節感を演出する重要なポイント。白や薄紫、若草色など、初夏を感じさせる軽やかな色味を取り入れると、より5月らしい装いが完成します。
【新緑と藤の花をめぐるきもの時間】
5月のお出かけには、きものを纏って新緑の中を歩くのがおすすめです。庭園や神社仏閣、自然豊かな場所を訪れると、季節の美しさをより一層感じられます。
中でも、この時期に見逃せないのが「藤の花」。ふわりと垂れ下がる紫の花房は、まるで絵巻物のような幻想的な美しさです。丹波・丹後エリアにも、素敵な藤の名所がたくさんあります。
『5月に訪れたい藤の名所』
⚪︎丹波市・白毫寺(びゃくごうじ)
九尺藤と呼ばれる長く美しい藤棚が見事。毎年5月上旬が見頃です。
⚪︎舞鶴市・舞鶴自然文化園
広大な敷地の中に咲く藤が壮観。海と藤のコントラストも楽しめます。
⚪︎丹波篠山市・王地山公園藤棚
市街地からほど近く、ふらりと立ち寄れる癒しスポット。きもの姿が映える場所です。
⚪︎福知山市・長安寺
新緑のもみじとともに、藤も楽しめる隠れた名所。静かで落ち着いた雰囲気が魅力です。
きもので訪れると、藤の花とのコントラストも美しく、素敵な写真が撮れること間違いなしです。
【おわりに】
季節の変わり目を迎える5月。冬の名残と、初夏の訪れ、その両方を楽しめる贅沢な時間です。
自然の色彩に寄り添うきものを纏って、新緑や藤の花に包まれながら、心地よい季節を満喫してみてはいかがでしょうか。
きもので過ごす5月が、心に残るひとときになりますように。